有名なダイヤモンド(12) 「スター オブ シェラレオーネ」

Four-Cs

Famous Diamond

「スター オブ シェラレオーネ」 THE STAR OF SIERRA LEONE

ウィンストンは勝ったか負けたか

重量:968.90カラット、原石

産地:イェンゲマ、シェラレオーネ

1972年のバレンタインデー、ナショナルダイヤモンドマイニングカンパニーのイェンゲマ・プラントでは、いつもの様に作業が行われていました。

突然1人のエンジニアと工業警備員が、グリーステーブル(選別機)の上に何か大きなものがあるのを見つけました。

最初は自分たちの目を疑い、テーブルに飛び付いてもっと近くで見てみると、グリース上に乗っていたのはニワトリの卵ほどある巨大なダイヤモンドだったのです。

計量してみると世界で3番目に大きな原石で、漂砂鉱床で採れたダイヤモンドの中では最大であることが分かりました。

事の重大さに気付いた関係者たちは、厳重な警備のもと石を首都のフリータウンに届け、シアカスチーブンス大統領は、この巨大な宝石を「スター オブ シェラレオーネ」と名付けました。

シェラレオーネ政府とダイヤモンド鉱山経営者は、デビアス中央販売機構にバイヤーを探してくれる様に委任しましたが、この様な法外な価値を有する石の場合、バイヤーを捜すのは難しく、特にインクルージョンがカットを施す際の大きな賭けとなったのです。

初めて販売に出された時、匿名で付けられた競売額はどれも250万ドルという最低価格に届かず、数ヵ月たっても交渉は足踏み状態で一向に話がまとまりませんでした。

しかし、ついにハリーウィンストンが競り落とし、数ヵ月入念な調査をした後、ウィンストンのダイヤモンドカッターは容易ならざる仕事に着手を始めたのです。

ウィンストンはその原石から世界有数のダイヤモンドを作り出したいと考えており、143.20カラットのエメラルドカットをファッション加工しましたが、精密に調べればインクルージョンが現れました。

そこで彼は大きさにこだわらずにフローレスにすることを考え、このダイヤモンドは7個の石に再カットされ、最大の石は32.52カラットとなりました。

また他の部分で1.85から53.96カラットに及ぶ石を10個カットしました。

全部合わせてもたった238.48カラット、つまり原石重量の約75%を失ったことになったのです。

それでも仕上げ加工した17個の石のうち13個はフローレスと報告されています。

ウィンストンは果たして賭けに勝ったのか負けたのか、その本意を述べたことはありません。

本文の参考資料並びにソース:GIA DIAMOND