Flourescence
蛍光は、光のエネルギーとダイヤモンド中の原子との相互作用の結果生じます。
ダイヤモンドの蛍光性は、標準的な長波紫外線灯を使用することで、容易に確認することができます。
(鑑定機関が使用するダイヤモンドライトには、一般的にこの装置が内蔵されております。)
また、蛍光性が強いものでは、太陽光線下で確認できるものもあります。
これは、天然ダイヤモンドのひとつの特性とも言えます。
最新技術が投入された無色合成ダイヤモンドでも、長波紫外線での強い蛍光性は認めることが出来ません。
このことは裏返せば、蛍光性の強いものは合成ダイヤモンドでは無く、天然であることを意味します。
GIA(米国宝石学会)の見解では、将来的に蛍光性が天然ダイヤモンドを証明する明確な指標になる可能性を示しています。
ダイヤモンドの蛍光性は、その程度によってNone(無し),Faint(弱い),Medium(中),Strong(鮮やか),Very Strong(かなり鮮やか) に分けられます。
蛍光性の違いによるダイヤモンドの外観の違い - 出典 GIA「ダイヤモンドの蛍光に関する事実の確認:11の迷信を払拭」より
4Cの様にダイヤモンドグレードにランクがあるために、蛍光性にもランクがあるように考えられがちですが、蛍光性と品質は全く関係がありません。
ダイヤモンドの蛍光性は、ナチュラル(天然)の証であり、ブルーの蛍光はダイヤモンドの黄味を飛ばし透明色に見せる効果も認められています。
またGIAでは、多くの場合MediumからStrongの蛍光を示すダイヤモンドの外観を人々は好む傾向にあると言及しています。
蛍光性が、4Cのグレーディングに影響を与えることは殆どありませんが、稀に余りにも蛍光性が強すぎて影響があるものに関しては、ダイヤモンド鑑定時にその要因が考慮されるため、鑑定の後に蛍光の有無や強弱でそのグレードを更に下げたりするものではありません。*注1
現在日本国内の相場価格では、NoneとFaintの蛍光性に関しては、グレードにより同じ~僅かな違いとなりますが、Mediumから10パーセント以上の下落が発生、Strongでは20~25パーセント程度下落する傾向にあります。
※日本国内の蛍光性と相場価格に関しては、2010年代前半迄は相場に余り影響を与えていませんでしたが、その後徐々に影響を与え始め、2020年前後以降は欧米と同様に明確な価格差が生じています。
※業界の慣習並びに商業的には、None-Faintのダイヤモンドには、蛍光性の記載や広告表示を避ける事はありません。そのため4Cの記載のみで蛍光性が記載・明示されないダイヤモンドは、一般的にその蛍光性はMedium以下と推測されます。
蛍光性の強弱が価格に影響を及ぼす要因は、ダイヤモンドの取引や輸入をしている国々での需要と供給に左右されるためで、例えばアメリカでは価格差ほど蛍光性が問題視されない傾向にあるのに対し、ヨーロッパの一部の地域においては、価格差を考慮しても強い蛍光性は好まれない傾向にあります。
このことは、ダイヤモンドの公正な流通という立場で考えると、決して好ましい事では無いと考えられています。
例えばある蛍光性が好ましいと吹聴され、それが一般的になったりすると、ダイヤモンドの品質とは関係ないにもかかわらず、他の蛍光性のダイヤモンドの市場価格が著しく変わるだけでなく、輸入されなくなる可能性が出てきます。
蛍光性以外の要因が全く同じダイヤモンドが2ピース存在すると仮定して、片方がNone片方がStrongであっても、輝きの総量は双方で異ならず全く同じとなるでしょう。
安く購入したダイヤモンドが、実は蛍光性Strong Blueだったというお話もよく聞きます。
しかしながら、相場価値ではなくダイヤモンドの輝きのみを重視する場合、貴方の気になっているダイヤモンドが、蛍光性だけの理由で価格が安くなっているのであれば、それはお買い得だと言えるでしょう。
ダイヤモンドの蛍光性に関しては、価格要因として明示する必要はあるものの、天然の証であるという認識のもと、各々微妙に色調が違うことから、世界でたった一つのものとして、所有者様の満足に帰属するものであればと考えます。
過去10年間に鑑定目的でGIAに預けられたダイヤモンドの25%~35%に蛍光性が確認されています。
そのうち蛍光性Medium(中)以上のものは約10%に留まっています。
すなわち、宝石品質ダイヤモンドの蛍光性はNone(無し)が約7割で最も多く、強い蛍光性のものはかなりの少数派と言えます。
ちなみに蛍光性が認められたダイヤモンドの95%以上は、青色の蛍光色になります。
一般的にはブルーが有名ですが、ブルーでも透明度のあるものや白っぽいものがあります。
他の色調ではホワイト、イエロー、イエロイッシュグリーン、オレンジ等様々な色調があります。
現在の鑑定書表記におきましては、Faint(弱い)の蛍光性については色調までの記載は無く、Faint(弱い)のみの記載となり、Medium以上は色調が表記されます。
また、ダイヤモンドの蛍光性や色(カラー)を表す際に、ある地域では決まった色調が比較的よく産出されたため、その場所の地名が、そのまま使われていた時期もありましたが、現在は紛らわしい事が要因で余り使われてはおりません。*注2
主にホワイトブルー色調のVery Strong(かなり鮮やか)のもので、強い蛍光性のためオイリーと呼ばれる。
ダイヤモンドがオイルを塗られたように白っぽくぼやけて見え、クラリティグレードに影響を与える可能性がある。
また、他の色調の主にVery Strong(かなり鮮やか)のもので、強い蛍光性のためカラーグレードに影響を与える可能性がある。(なかにはカラーグレーディングを断念するものもあります。)
ただ影響を与える場合においても、ダイヤモンドグレーディング時に判定基準の考慮に入るため、ダイヤモンドグレーディング後のマイナス要因にはならない。
GIAが鑑定してきた蛍光性のあるダイヤモンドのうち、この様な特徴が認められたものは僅か0.2パーセント以下。
逆にカラーグレードの低いものでは、強いブルーの蛍光性が珍重される場合もある。
Jagers(ヤガー):強く鮮やかなブルーの蛍光のある無色透明なもの(ヤガースフォンテン鉱山より)
River(リバー):蛍光の無い無色(パイプ鉱床より川辺の漂砂鉱床からが多かったため)
Wesselton(ウエッセルトン) :僅かに良質の色のあるもの(ウエッセルトン鉱山より)
Cape(ケープ):顕著なライトイエロー(喜望峰より)
Premier(プレミア):強いブルーの蛍光のあるライトイエロー(プレミア鉱山より)