Cut
カットとシェイプを混同されている方が多いようですが、カットはダイヤモンドの全体的な形のバランスと研磨の仕上げの状態を表しています。
カラー、カラット、クラリティは自然が決定しますが、ダイヤモンドに輝きという永遠の生命を吹き込むのは熟練したカット職人の技。
最新の技術と経験に裏付けられた職人技によってバランスよくカットされたダイヤモンドは、光をよく取り込み、きらめきを増幅させ、限りなく価値を高めます。
特に原石からの歩留まりが価格に大きな影響を与えるダイヤモンドカッティングの世界では、「ソーヤブル」と言われる最高の歩留まりがある代わりに最も高価である原石が理想的とされています。
原石の研磨は、まさにミケランジェロやロダンの傑作にたとえられるような芸術であり、ダイヤモンドの輝きは、生命、愛、情熱を象徴するものです。
近年はダイヤモンドカット技術の進歩により、「エクセレントの中でも最高」と言われ業者間で好まれていた3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)のダイヤモンドが、一般の消費者様でも普通に選択できるようになっています。
ソーヤブルとはソー(のこぎり)イングに適していると言う意味で、この場合2つのダイヤモンドに分けられることを意味します。(そのため歩留まりが高く高価になります)
宝石品質ダイヤモンドの原石はソーヤブル(全体の2割弱で正八面体もしくは限りなくそれに近い形状でラウンドブリリアントカットに最も適しています)、メイカブル(長い、平べったい等形状がまちまちで、主にファンシーシェイプダイヤモンドに研磨される)、ニアージェム(かろうじて宝石用となるもの~工業用)に分けられます。
カット技術の進歩から、メイカブルの原石からラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが研磨されることもありますが、逆にソーヤブルからファンシーシェイプをカットする場合もあります。
カット後のダイヤモンドの良し悪しを原石の出自に求める風潮がございますが、Fカラー以上VS以上エクセレント以上のラウンドブリリアントカットダイヤモンドを選択する限りにおいては、原子構造上特に優れたものからカットされる必要があるという意味で、原石の出自を気にする必要はまず無いと言えるでしょう。
1つは効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)
もう1つは高い歩留り(ウエイトリカバリー)です。
ラウンドブリリアントカット:58面体(キューレットを除く場合57面体)
カラー:DからZカラーまで
クラリティ:フローレスからI3
カラット:自動測定機で計測可能な大きさ(目安としては約0.1ct以上)
カットグレードはプロポーション要素(プロポーションの各寸法については自動測定機ダイア メンションを使用)をGIA Facetware Cut Estimatorデータベース(3850万通り以上)で照合し、目視評価要素を経てExcellent(エクセレント)・VeryGood(ベリーグッド)・Good(グッド)・Fair(フェア)・Poor(プア)の各グレードに決定されます。
テーブルサイズ、全体の深さ、クラウン角度/高さ、スター長さ、パビリオン角度/高さ、ローワーハーフ長さ、ガードル厚
テーブル:52~62% 高さ:57.5~63% クラウン角度:31.5~36.5° パビリオン角度:40.6~41.8°
ガードル厚(谷部の最大 最小)、キューレットサイズ、ポリッシュ、シンメトリー
上記数値は参考値です。
GIAカットグレードには、単語自体の意味合いを考慮しPerfect(完全)やIdeal(完全、理想的)という誤解を生む可能性のある単語の表記はございません。海外ジュエラーの多くには、カットグレード表記の無いGIA鑑定書(GIA鑑定書にはカットグレード表記があるものと無いものの2種類がございます。)を採用し、カット表記に関してはPerfect(完全)やIdeal(完全、理想的)を使用するケースがございますが、Excellent、VeryGood、Good、Fair、Poor以外はその会社もしくは店舗の独自グレード表記であり、GIAカットグレードを記載している事にはなりませんので注意が必要です。
GIAダイヤモンド鑑定書の種類
2006年にアメリカGIAがカットグレードシステムを開発、導入したのを期に、2006年以降全世界のGIAシステムに則った正式なラウンドブリリアントカットダイヤモンドの鑑定書には、国やブランドに関係無くカットグレードの記載がされています。カットグレード記載の無い鑑定書の採用は、依頼者が意図的にカットグレードの記載を避けた事になります。同一書面上にカットグレード記載の無い鑑定書は、4Cのうち1つのグレーディングが欠けている事になり、正式な鑑定書と呼ぶ事は出来ません。
業界の慣習並びに商業的には、VeryGood(ベリーグッド)評価以上のダイヤモンドには、グレードの記載や広告表示を避ける事はありません。そのため、カットグレードが記載、明示されないダイヤモンドは、どれだけ良い広告文句が並べられていたとしても、一般的にそのダイヤモンドのカットグレードはGood以下と推測されます。
1. 浅すぎるカット:下部から光が漏れている。
2. 深すぎるカット:側面から光が漏れている。
3. 完全なカット:上部での光や輝きが多い。
正確にカットされたダイヤモンドは、効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)を示します。
ダイヤモンドから放たれる美しい光輝がダイヤモンドの最大の魅力です。
その比類なき美しさはダイヤモンドが天然鉱物の中で特に優れた硬度と屈折率、分散率をもつことに由来します。
これらの特性を活かし原石を研磨(カット)することによって得られるブリリアンシー、ディスパージョン、シンチレーションと呼ばれる光の効果と純粋な透明度が相乗作用してダイヤモンドは永遠に美しく輝くのです。
表面および内部反射によって目に戻ってくる全ての光の総体を意味する。内部に関しては、石がどのようにカットされているかに大きくかかっている。
白色光の拡散と、その構成要素であるスペクトル色相への分離。
ダイヤモンド自体のディスパージョンは高いが、ディスパージョンがその本領をどの程度効果的に発揮できるかは、カットによって決まる。
石、光源または観察者が動く時に見られる光のきらめき。
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3Excellent H&C(拡大) | VeryGood(拡大) |
上の図はカットグレード3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)とVeryGood(ベリーグッド)のダイヤモンドを目視し易い様に表面反射を抑えて撮影した鑑定書に添付される写真です。
3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)は私たちに芸術的ともいえる正確なプロポーションとフィニッシュを見せてくれます。
矢が放射状に均一に延びたパビリオンメインファセット(キューピットの矢)と、中心に見えるパビリオンに映ったスターファセットの8つのボウタイ(GIA用語、蝶ネクタイの模様)が正確に八角形を描いているのが特徴的です。
ノーマルExcellent(エクセレント)ではこれらの部分に数パーセントのズレが生じ、特に中心付近が大きくズレ初めます。
しかし、VeryGood(ベリーグッド)になると、各ファセットにはサイズ、角度とも大きなズレが生じ、シンメトリー(対象性)が大幅に損なわれてしまいます。
正確にカットされたダイヤモンドは、表面反射を抑えても内面反射により明るく写っているのが判ります。
左からエクセレント・グッド・プア - 出典 GIA
GIAカットグレーディングシステムではExcellentが最高となりますが、その中でも以下の要因によりクラス分けが存在致します。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもの。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもの。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもの。
且つハートアンドキューピットの現象が認められるもの。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもの。
且つハートアンドキューピットの現象が認められるもの。
カットグレード(等級)はプロポーションと目視要素の総合評価で決まりますが、それと併記される仕上げ(フィニッシュ)項目に、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)があります。
3Excellent(トリプルエクセレント)は、その3つが全てエクセレント評価の、非常に正確性の高いダイヤモンドです。
ノーマルExcellentやExcellent H&Cでは、ポリッシュとシンメトリーのどちらかか、双方がVeryGood評価となります。
ただ、3Excellent(トリプルエクセレント)はフィニッシュが正確である事の指標となりますが、4C評価レベルの厳密な判別基準ではないため、後述するカットの正確なダイヤモンドに見られるH&C(ハートアンドキューピット)の現象が出ないものも多数存在します。
この場合、部分的にファセット角度がズレていたり、そもそもシンメトリー評価がかなり甘い可能性があるため、3Excellent(トリプルエクセレント)ご購入の場合、H&C(ハートアンドキューピット)認定されているものをご選択いただく方が、厳密なカットの正確性という意味では懸命と言えます。
国内相場では、3Excellent H&C > Excellent H&C > 3Excellent >= ノーマルExcellent の順で相場価格が変わります。
<関連リンク>:GIAのエクセレントは、全てトリプルエクセレントなのでしょうか?
上の写真はダイヤモンドをクラウン側から、右の写真はパビリオン側から特別な条件で撮影したものです。
このように最高のシンメトリー(対称性)が奏でる綺麗で正確な8つのアロー(矢模様)とハート像がくっきりと観察される現象をハートアンドキューピットと称し、CGLやAGTのダイヤモンドグレーディングレポート(鑑定書)にサブレポートが付属します。
それぞれの形状や位置関係には基準を設け、トリプルエクセレントクラスで同じ現象に見えるものでも、ハートやキューピットの矢模様が薄かったり少しのズレ等が原因でH&C(ハートアンドキューピット)と認定されないものが沢山あります。
特に国内鑑定機関であるCGLやAGTが認定するH&Cは厳密で、海外でH&A(H&C)認定されたものでも、特に現象が薄いという理由で認定されないものが多々あります。
海外老舗ブランドのこの分野に対するこだわりも最たるもので、ブランドの慣習上記載はございませんが、殆どの場合エクセレントカットのダイヤモンドにはH&Cが認められるものを採用しています。
正式な基準のH&C(ハートアンドキューピット)は、1ピースが0.1ct未満のダイヤモンドルースには交付されません。
<H&C認定の厳しさを示す参考資料>:中央宝石研究所:ハート&キューピット判定基準(PDFファイル)
エクセレントカットの人気を不動のものにしたハートアンドキューピットは、マルセルトルコフスキーのラウンドブリリアントカット理論完成から74年後の1993年に、世界最高峰のダイヤモンドカッターであるANTWERP BRILLIANTのフィリッペンスベルト氏とトップチームがアントワープで研磨に成功し、ダイヤモンド研磨業界に新しい常識を作り出しました。
<こだわるなら必須>:世界最高峰のダイヤモンドカッターの手によって生み出されたダイヤモンド界のスタンダードカット
GIAではH&Cの検査・認定業務を行っていないため、H&Cの認定を受けるには国内鑑定機関であるCGLやAGTでのダブル鑑定が必要になります。
3Excellent H&C表記でもCGLやAGTの証明(ソーティング等)が付属しないものは、正式なH&Cとして市場では扱われておりません。
正式にH&C認定されていない3Excellentの国内相場価格は、ノーマルExcellentと余り変わらなくなりますので注意が必要です。
<関連リンク>:GIAのトリプルエクセレントは、全てハートアンドキューピットなのでしょうか?
GIAの3Excellentに対し、販売価格を安く見せるため正式に認定を取得せず販売側の自己判定でH&C表記している例が少なからず見られるようになっておりますが、信頼のある第三者機関(国内ではCGLもしくはAGT)で判定されたもの以外は市場ではH&Cとは認められませんので、H&C表記であるのにGIA鑑定書しか付属しない場合は、ご購入者様の資産的な損失にも関わりますので注意が必要です。(GIA鑑定書のみではH&Cの証明は出来ません。)
鑑定書写真の矢やハート(白い部分)にインクルージョンが映っているものがございますが、白い部分には映っていない場合でも青い部分により大きなインクルージョンが存在する可能性もあるため(基本的に必ず何処かにインクルージョンは存在します。)、その事が理由でそのダイヤモンドの良し悪しを決めるものではありません。
大量に出回っておりますファッションリング、アクセサリー用途のものは、殆どの場合が1ピース0.1ct未満や、形がかなりずれている事から、正式にはハートアンドキューピットとは言えません。(写真付きのものは大量に複製されているもので、その商品自体のダイヤモンドを撮影したものではありません。)
稀にベリーグッド評価のものでもシンメトリー(対称性)が優れたエクセレントに近いものでは同様の現象が出る(VeryGood H&Cと呼ばれExcellent H&Cと同様にH&Cのサブレポートが付属します)ため、それだけでカットグレードを決めるものではありませんが、カットの正確性の見た目の判断基準になることや、近年の認知度アップと需要増により、通常のノーマルExcellentや3ExcellentよりExcellent H&Cの方が、相場価格が高くなっています。
a: Table b: Bezel c: Star d: Upper Girdle e: Pavilion Main f: Lower Girdle