Four-Cs

Cut

ダイヤモンドのカット

Cut (カット=全体的な形のバランスと研磨仕上げの状態)

ダイヤモンドカット光の反射図

カット 原石に永遠の生命を吹き込むもの

カットとシェイプを混同されている方が多いようですが、カットはダイヤモンドの全体的な形のバランスと研磨の仕上げの状態を表しています。

カラー、カラット、クラリティは自然が決定しますが、ダイヤモンドに輝きという永遠の生命を吹き込むのは熟練したカット職人の技。

最新の技術と経験に裏付けられた職人技によってバランスよくカットされたダイヤモンドは、光をよく取り込み、きらめきを増幅させ、限りなく価値を高めます。

特に原石からの歩留まりが価格に大きな影響を与えるダイヤモンドカッティングの世界では、「ソーヤブル*」と言われる最高の歩留まりがある代わりに最も高価である原石が理想的とされています。

原石の研磨は、まさにミケランジェロやロダンの傑作にたとえられるような芸術であり、ダイヤモンドの輝きは、生命、愛、情熱を象徴するものです。

近年はダイヤモンドカット技術の進歩により、「エクセレントの中でも最高」と言われ業者間で好まれていた3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)のダイヤモンドが、一般の消費者様でも普通に選択できるようになっています。

ソーヤブルのイメージソーヤブルとはソー(のこぎり)イングに適していると言う意味で、この場合2つのダイヤモンドに分けられることを意味します。(そのため歩留まりが高く高価になります)

宝石品質ダイヤモンドの原石はソーヤブル(全体の2割弱で正八面体もしくは限りなくそれに近い形状でラウンドブリリアントカットに最も適しています)、メイカブル(長い、平べったい等形状がまちまちで、主にファンシーシェイプダイヤモンドに研磨される)、ニアージェム(かろうじて宝石用となるもの~工業用)に分けられます。

カッターが常に留意する2つの基本目的

1つは効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)

もう1つは高い歩留り(ウエイトリカバリー)です。

カットグレーディングシステムの対象

ラウンドブリリアントカット:58面体(キューレットを除く場合57面体)

カラー:DからZカラーまで

クラリティ:フローレスからI3

カラット:自動測定機で計測可能な大きさ(目安としては約0.1ct以上)

カットグレーディング

ダイヤモンドカットスケール

カットグレードはプロポーション要素(プロポーションの各寸法については自動測定機ダイア メンションを使用)をGIA Facetware Cut Estimatorデータベース(3850万通り以上)で照合し、目視評価要素を経てExcellent(エクセレント)VeryGood(ベリーグッド)Good(グッド)Fair(フェア)Poor(プア)の各グレードに決定されます。

プロポーション要素

テーブルサイズ(table size)
全体の深さ(total depth)
クラウン角度(crown angle)/高さ(crown height)
パビリオン角度(pavilion angle)/深さ(pavilion depth)
スター長さ(star length)
ローワーハーフ長さ(lower half length)
ガードル厚(girdle thickness)

ダイヤモンドのプロポーション要素(立体図)

ダイヤモンドのプロポーション要素(立体図) - 出典 GIA

ダイヤモンドのプロポーション要素(平面図)

ダイヤモンドのプロポーション要素(平面図) - 出典 GIA

カットグレード別プロポーション要素の数値範囲 ↓

目視評価要素

ガードル厚(谷部の最小 最大)、キューレットサイズ、ポリッシュ、シンメトリー

カットグレード別目視評価要素の数値範囲 ↓

GIAエクセレントカットの各数値範囲

テーブルサイズ:52~62% 全体の深さ:57.5~63% クラウン角度:31.5~36.5° パビリオン角度:40.6~41.8°

カットの状態によって、光をどのように取り込んでいるかがわかります。

光の取り込み図

1. 浅すぎるカット:下部から光が漏れている。

2. 深すぎるカット:側面から光が漏れている。

3. 完全なカット:上部での光や輝きが多い。

正確にカットされたダイヤモンドは、効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)を示します。

ダイヤモンドから放たれる美しい光輝がダイヤモンドの最大の魅力です。

その比類なき美しさはダイヤモンドが天然鉱物の中で特に優れた硬度と屈折率、分散率をもつことに由来します。

これらの特性を活かし原石を研磨(カット)することによって得られるブリリアンシー、ディスパージョン、シンチレーションと呼ばれる光の効果と純粋な透明度が相乗作用してダイヤモンドは永遠に美しく輝くのです。

ダイヤモンドの輝きの3要素

ブリリアンス

表面および内部反射によって目に戻ってくる全ての光の総体を意味する。

カットが良くなるほど石は明るくなります。

内部反射に関しては、石がどのようにカットされているかに大きくかかっている。

ファイア(ディスパージョン)

白色光の拡散と、その構成要素であるスペクトル色相への分離。

スポットライトの下で石を動かす事で、赤や青、黄色、オレンジ色のきらめきを探す事が出来る。

ダイヤモンド自体のディスパージョンは高いが、ディスパージョンがその本領をどの程度効果的に発揮できるかは、カットによって決まる。

シンチレーション(スパークル)

石、光源または観察者が動く時に見られる光のきらめき。

カットが良くなるほど反射は均等になり、明暗のコントラストが鮮やかになります。

<関連リンク>:ダイヤモンドのファイアやシンチレーションを可視化したウィスパーオブダイヤモンド

カットグレードの差による目視での明らかな違い

3Excellent H&C VeryGood
3Excellent H&C(拡大) VeryGood(拡大)

上の図はカットグレード3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)とVeryGood(ベリーグッド)のダイヤモンドを目視し易い様に表面反射を抑えて撮影した鑑定書に添付される写真です。

3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピット)は私たちに芸術的ともいえる正確なプロポーションとフィニッシュを見せてくれます。

矢が放射状に均一に延びたパビリオンメインファセット(キューピットの矢)と、中心に見えるパビリオンに映ったスターファセットの8つのボウタイ(GIA用語、蝶ネクタイの模様)が正確に八角形を描いているのが特徴的です。

ノーマルExcellent(エクセレント)ではこれらの部分に数パーセントのズレが生じ、特に中心付近が大きくズレ初めます。

しかし、VeryGood(ベリーグッド)になると、各ファセットにはサイズ、角度とも大きなズレが生じ、シンメトリー(対象性)が大幅に損なわれてしまいます。

正確にカットされたダイヤモンドは、表面反射を抑えても内面反射により明るく写っているのが判ります。

カットグレードエクセレントとグッドとプア

左からエクセレント・グッド・プア - 出典 GIA

Excellent(エクセレント)カットの種類

トリプルエクセレントハートアンドキューピットを含めたカットスケール

GIAカットグレーディングシステムではExcellentが最高となりますが、その中でも以下の要因によりクラス分けが存在致します。

Excellent=ノーマルエクセレント

カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもの。

3Excellent=トリプルエクセレント

カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもの。

Excellent H&C=エクセレントハートアンドキューピット

カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもの。

且つハートアンドキューピットの現象が認められるもの。

3Excellent H&C=トリプルエクセレントハートアンドキューピット

カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもの。

且つハートアンドキューピットの現象が認められるもの。

3Excellent(トリプルエクセレント)

トリプルエクセレントの記載例

カットグレード(等級)はプロポーションと目視要素の総合評価で決まりますが、それと併記される仕上げ(フィニッシュ)項目に、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)があります。

3Excellent(トリプルエクセレント)は、その3つが全てエクセレント評価の、非常に正確性の高いダイヤモンドです。※海外ではトリプルXとも呼ばれています。

ノーマルExcellentやExcellent H&Cでは、ポリッシュとシンメトリーのどちらかか、双方がVeryGood評価となります。

ただ、3Excellent(トリプルエクセレント)はフィニッシュが正確である事の指標となりますが、4C評価レベルの厳密な判別基準ではないため、後述するカットの正確なダイヤモンドに見られるH&C(ハートアンドキューピット)の現象が出ないものも多数存在します。

この場合、部分的にファセット角度がズレていたり、そもそもシンメトリー評価がかなり甘い可能性があるため、3Excellent(トリプルエクセレント)ご購入の場合、H&C(ハートアンドキューピット)認定されているものをご選択いただく方が、厳密なカットの正確性という意味では懸命と言えます。

国内相場では、3Excellent H&C > Excellent H&C > 3Excellent >= ノーマルExcellent の順で相場価格が変わります。

<関連リンク>:GIAのエクセレントは、全てトリプルエクセレントなのでしょうか?

H&C(ハートアンドキューピット)

ハートアンドキューピット写真

上の写真はダイヤモンドをクラウン側から、右の写真はパビリオン側から特別な条件で撮影したものです。

このように最高のシンメトリー(対称性)が奏でる綺麗で正確な8つのアロー(矢模様)とハート像がくっきりと観察される現象をハートアンドキューピットと称し、CGLやAGTのダイヤモンドグレーディングレポート(鑑定書)にサブレポートが付属します。

それぞれの形状や位置関係には基準を設け、トリプルエクセレントクラスで同じ現象に見えるものでも、ハートやキューピットの矢模様が薄かったり少しのズレ等が原因でH&C(ハートアンドキューピット)と認定されないものが沢山あります。

特に国内鑑定機関であるCGLやAGTが認定するH&Cは厳密で、海外でH&A(H&C)認定されたものでも、特に現象が薄いという理由で認定されないものが多々あります。

海外老舗ブランドのこの分野に対するこだわりも最たるもので、ブランドの慣習上記載はございませんが、殆どの場合エクセレントカットのダイヤモンドにはH&Cが認められるものを採用しています。

正式な基準のH&C(ハートアンドキューピット)は、1ピースが0.1ct未満のダイヤモンドルースには交付されません。

<H&C認定の厳しさを示す参考資料>:中央宝石研究所:ハート&キューピット判定基準(PDFファイル)

H&C(ハートアンドキューピット)の歴史

エクセレントカットの人気を不動のものにしたハートアンドキューピットは、マルセルトルコフスキーのラウンドブリリアントカット理論完成から74年後の1993年に、世界最高峰のダイヤモンドカッターであるANTWERP BRILLIANTのフィリッペンスベルト氏とトップチームがアントワープで研磨に成功し、ダイヤモンド研磨業界に新しい常識を作り出しました。

<こだわるなら必須>:世界最高峰のダイヤモンドカッターの手によって生み出されたダイヤモンド界のスタンダードカット

GIA鑑定書におけるH&Cについて

GIAではH&C(ハートアンドキューピット)の検査・認定業務を行っていないため、H&Cの認定を受けるには国内鑑定機関であるCGLやAGTでのダブル鑑定が必要になります。

3Excellent H&C表記でもCGLやAGTの証明(ソーティング等)が付属しないものは、正式なH&Cとして市場では扱われておりません。

正式にH&C認定されていない3Excellentの国内相場価格は、ノーマルExcellentと余り変わらなくなりますので注意が必要です。

<関連リンク>:GIAのトリプルエクセレントは、全てハートアンドキューピットなのでしょうか?

ラウンドブリリアント 各ファセットの名称と数

テーブル(table):1
スター(star):8
ベゼル(bezel):8
アッパーハーフ(upper half):16
パビリオンメイン(pavilion main):8
ローワーハーフ(lower half):16
キューレット(culet):1

ラウンドブリリアントカットダイヤモンド各ファセットの名称

カットグレードのパラメーターテーブル

プロポーション要素

テーブルサイズ(Table Size)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 52% to 62%
Very Good to Poor 50% to 66%
Good to Poor 47% to 69%
Fair to Poor 44% to 72%
Poor <44% to >72%
全体の深さ(Total Depth)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 57.5% to 63.0%
Very Good to Poor 56.0% to 64.5%
Good to Poor 53.0% to 66.5%
Fair to Poor 51.9% to 70.9%
Poor <51.9% to >70.9%
クラウン角度(Crown Angle)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 31.5º to 36.5º
Very Good to Poor 26.5º to 38.5º
Good to Poor 22.0º to 40.0º
Fair to Poor 20.0º to 41.5º
Poor <20.0º to >41.5º
クラウン高さ(Crown Height)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 12.5% to 17.0%
Very Good to Poor 10.5% to 18.0%
Good to Poor 9.0% to 19.5%
Fair to Poor 7.0% to 21.0%
Poor <7.0% to >21.0%
パビリオン角度(Pavilion Angle)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 40.6º to 41.8º
Very Good to Poor 39.8º to 42.4º
Good to Poor 38.8º to 43.0º
Fair to Poor 37.4º to 44.0º
Poor <37.4º to >44.0º
スター長さ(Star Facet Length)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 45% to 65%
Very Good to Poor 40% to 70%
Good to Poor any value
Fair to Poor any value
Poor any value
ローワーハーフ長さ(Lower Half Facet Length)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 70% to 85%
Very Good to Poor 65% to 90%
Good to Poor any value
Fair to Poor any value
Poor any value
ガードル厚(Girdle Thickness)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor 2.5% to 4.5%
Very Good to Poor up to 5.5%
Good to Poor up to 7.5%
Fair to Poor up to 10.5%
Poor any value

目視評価要素

ガードル厚(谷部の最小 最大)(Girdle Thickness Verbal Description)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor Thin to Slightly Thick
Very Good to Poor Extremely Thin to Thick
Good to Poor Extremely Thin to Very Thick
Fair to Poor Extremely Thin to Extremely Thick
Poor Extremely Thin to Extremely Thick
キューレットサイズ(Culet Size)
Possible Grade Parameter Range
Excellent to Poor none to small
Very Good to Poor none to medium
Good to Poor none to large
Fair to Poor none to very large
Poor none to extremely large
ポリッシュ(Polish)
Possible Grade Polish Grade
Excellent to Poor Excellent
Excellent to Poor Very Good
Very Good to Poor Good
Good to Poor Fair
Poor Poor
シンメトリー(Symmetry)
Possible Grade Symmetry Grade
Excellent to Poor Excellent
Excellent to Poor Very Good
Very Good to Poor Good
Good to Poor Fair
Poor Poor

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本文の参考資料並びにソース:GIA DIAMOND